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さり気なく、華やかに、シングルモンク。 (84)Enzo Bonafe 歴史②

 こんにちは。

 今日も晴れました。

 

 前回の続きです。

さり気なく、華やかに、シングルモンク。 (83)Enzo Bonafe 歴史① - 靴と歩む、僕の...

 『Enzo Bonafe』のシングルモンクを取り上げ・・

 る前に、歴史についてみています。

 

 こちらの記事を読ませて頂きました。

otokomaeken.com

lastmagazine.jp

 エンツォ・ボナフェがどのような工房なのかが伝わってきます!

www.lifehacker.jp

 日本に対する見解とボナフェ氏の人柄が伝わってきます。

 

 ファクトリーでは手仕事を中心とした工程が各所で見られます。

 記事の中に靴作りに関する7つの工程がありましたね。

 

①計画と裁断

 ビスポーク客やエンドユーザーから得た貴重な意見を参考に、入念に完成形をイメージして設計されるそう。

 最高級のレザーを選択し、靴の出来栄えを大きく左右するヴァンプは手でカットを行っています。

 

 デザインやアッパーづくり、パターンづくりはグリエーナさんの担当との事。

 革を切り出すセクションの監督もされています。

 そこではあたりまえのようにハンドクリッキングが行われています。

 使っているパターンは紙製で、決まった形を大量生産しないことの表れですね。

 

②アッパーの縫合

 ヴァンプのカットからアッパーの縫合までの工程は全て一人の職人の手で行われます。

 一人の職人が一足の靴に集中する事で製品のクオリティが保証されます。

 

③組み立て

 ベンチ、ハンマー、爪を使いながら、手作業による伝統的な方法で組み立てを行います。

 

 ボトムメイキングのセクションでは、男性の職人ふたりがベンチに向かい合い、片やつり込み、片やハンドソーンによる「グッドイヤー・ア・マーノ」の縫製を行っています。

 

④形を整える

 組み立ての後、打ち込みをする事でさらに形を整えます。

 

 ボナフェ氏は「この作業は自分の眼の黒いうちは譲れない」とよく言っておられるそうです。(凄)

 叩く、では少し強過ぎるので打つという表現がふさわしいのですね!

 打つのはヒールカウンターやトウカウンターなど補強が入っている部分だけでは無く、靴全体だそうです。

 「革はつり込まれると伸びて色が変わる。こうやって打って毛穴を伏せることで元の色、質感に戻る」と仰られていますね。

 それを1時間くらいはされるそうです

 既成靴のファクトリーでは考えられない丁寧さで、時間をかけた作業との事。

 村瀬由香さん(『Le Yucca's』)によると「イタリアでは誰もこんなことはやっていないと思う」と。

 

⑤ソールの縫い付け

 様々な技法を駆使した底付けはもちろん、ステッチングの前後にも多くの作業を施します。

 

 底付けの後アウトソールのチャネルを閉じる工程でも、職人がハンマーで叩いたり、柄の部分で擦ったりしながらチャネルを閉じで底を均していきます。

 「エンツォは底を舐めてこの作業をやることもある。」そうです。

 

 ソールの革も前日の晩工場を閉める際にボナフェ氏が水に浸け、翌朝一番に取り出して並べるのが日課なのですね。

 自然乾燥により適度な水分含有量になり、その後の作業で打ったり磨いたりすることができるようになるそうです。

 因みに、ボナフェ氏の自宅はファクトリの階上だそう。(密)

 すなわち、ボナフェ氏の生活リズムはそのまま靴作りのリズムとなっています。

 土日もお構いなしだそうで、心配する家族はサッカーのシーズンシートをプレゼントして半ば強引に休ませることもあったそうです。

 それでも当のボナフェ氏は「土曜と日曜は週の中で一番良い二日間なんだ。〜静かなファクトリーでひとり木型について研究したり、クロコダイルのような高級な革を切ったり、集中して作業できる最高の時間なんだ」と。(笑)

  

⑥ソールのクリーニングとヒールの着色

 専門的な技術を持つ職人によって行われます。

 靴を美しくするのはもちろん、革の特性によるトラブルや小さな欠陥を見逃さずに徹底的に排除されます。

 

⑦磨き上げ

 上質で美しい革に対して必要最小限の最高のクリームのみを使用し、じっくりと磨き上げます。

 

 

 こうした手仕事が集積した靴作りを行う以上、一気に多くの靴をつくるのは確かに難しそうです。

 しかもファクトリーではひとりのワーカーが複数の作業を掛け持ちすしています(マルチタスク)。

 現場の職人こそ代替わりしていますが、靴の作り方自体は『ア・テストーニ』から独立した時と大きく変わっていません。

 

 「うちはかなり古いやり方でしょう。こうした昔ながらの工程や作業の大切さは、あんまり分かってもらえないかもしれないけれど、私としては分かってもらえても、もらえなくても、どちらでもいいのです。私がこれを続けたいからやっている。それでいい。」

 とボナフェ氏は仰っていますね。

 

 そして、

 「〜自分はあまり満足しないタイプで、他人に厳しく言うこともあるが、そんな私に耐えて、妻は一緒にやってきてくれた。まずそれに感謝したい。

 そして一緒に工房を切り盛りしてくれる子どもたち家族にも感謝。

 さらに、時には日曜も出て働いてくれたファクトリーのメンバー、私が必要なときに皆が助けてくれたことは大きかった。

 私の功績というのは、こういうチームをつくることができたことかもしれないね。」

 と。

 

 現在は息子のマッシモ氏に現場を任せたり、娘を経営陣に迎えるなど、家族経営のブランドとして地盤を固めています。

 それでもエンツォ・ボナフェ氏は今なお一人の職人として第一線で自身のブランドの靴を手掛け続けています。

 

 

感想

 エンツォ・ボナフェの靴を見ていると、ある意味ではイタリア靴らしくなく、ある意味ではイタリア靴らしい、と感じる事があります。

 

 例えば、デザインです。

 イタリア靴というと、色気のあるフォルムや色使いであったり、デコラティブな装飾デザインであったり、個性の強い靴というイメージがあります。

 それに対して、エンツォ・ボナフェの靴はずっと控えめで、クラシカルなイギリス靴のような雰囲気を感じることもありますね。

 流行を追う事よりも長く履き続けられる

 しかし、よく見ると、革の柔らかさや色味のニュアンスにイタリアを感じたり、フォルムのエッジや装飾のバランスにイタリアを感じることもあります。

 

 例えば、底付け。

 イタリア靴というと、やはりマッケイ製法のイメージが強いですね。

 履き始めからソールの反りが良くて軽い履き心地が魅力です。

 コバに出し抜いをかける必要が無いので張り出しを抑えられ、薄いソールやしなやかなソールも多いように思います。

 それに対して、エンツォ・ボナフェはグッドイヤー・ア・マーノ製法が中心ですね。

 丈夫さやオールソールという点で、履き込むことで足に馴染ませるという点でも、英米靴に多いグッドイヤーウェルト製法に近いように思います。

 コバに出し抜いがあり張り出している点でも、丈夫そうなソールという点でも、グッドイヤーウェルト製法に似た見た目ですね。

 ただし、グッドイヤーウェルト製法では無くハンドソーンによるグッドイヤー・ア・マーノ製法であるというのはイタリアらしいように思います。

 イギリスでもビスポークであればハンドソーン製法なのかもしれませんが、少なくとも既成靴でそれを実現しているのはイタリアや東欧等の職人気質なブランドではないかと。

 以前ジョンロブ(パリ)の話の中で『BONORA』のハンドソーンにも触れましたが、当時の旧ボノーラは倒産してしまいましたよね。

 今でもハンドソーンで既成靴を展開している代表的なブランドが『エンツォ・ボナフェ』で、ゆえにそれがそのままイタリア靴のイメージとなるのだと思います。

 つまり、手仕事を貫く職人気質ですね。

 

 今回はここまでです。

 ではでは。

 


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