こんにちは。
今日は・・・昼頃からバケツをひっくり返したような雨。
本当に梅雨???
前回の続きです。
1998年に発表されたエルメスの「クイック」が何故重要なのか、あれこれ考えてみました。
やはりファッションとしてのスニーカーという意味合いが大きいでしょうかね。
もちろん、「クイック」以前から、ファッションとしてもスニーカーは履かれていました。
それこそアメリカントラッドや、イギリスの「サンドシューズ」だって、スポーツとしてでは無くファッションとしてのスニーカーでしたよね。
そんな「クイック」以前のスニーカーファッションについて、もう少し考えてみます。
まずは主に若者ファッションとしてのスニーカー、ですね。
体育や部活・クラブなどのスポーツシューズからスニーカーに馴染み、日常でもカジュアルファッションとしてスニーカーを履くという感じです。
そうなると、アディダスやナイキといったスポーツブランドが作るスニーカーが人気となるでしょうか。
そしてアメリカのストリートファッションでスニーカー文化が醸成され、パリや東京のストリートファッションで洗練されてきたのかな!??(盛り過ぎ?)
もう1つは、大人の休日カジュアルファッションとしてのスニーカーです。
イギリスの「サンドシューズ」がまさにそうでしたよね。
大人は仕事着があるので、カジュアルファッションは休日に限られる場合が多くなります。
スニーカーは基本的にスポーツ・カジュアルシューズですので、休日のカジュアルファッションに合わせる靴という位置づけですね。
ですので、基本的には先の若者ファッションの延長線上にあると言えるでしょうか。
ただ、大人になる程「大人らしいスタイル」を好む傾向があるように思います。
そうなると、若者が履くようなスニーカーは履きづらくなりますよね・・・。
そこで「クイック」の登場です。
エルメスはイメージ的にもデザイン的にも品質的にも価格的にも大人のためのファッションブランドです。
それも品格のある上質なライフスタイルを作るブランドですね。
そのエルメスが大人のための上品なスニーカーを発表したのです。
「クイック」のデザインを見ると、
革の切り返しデザインは目立ちますし、シューレースも太め、ソールも厚め、全体的なボリューム感もあり、
カジュアルシューズである事には変わりが無いでしょうね。
ただし、エルメスのファッションはカジュアルであっても上品さがあり、品格があります。
「クイック」もドレスファッションでなければならない場では難しいですが、それ以外の場では大人が安心して履ける「きちんと感」があります。
それが若者のスポーツスニーカーには無かった新しいポジション、「レザースニーカー」というポジョションだったのかなと思います。
そして、「レザースニーカー」を取り入れた綺麗目なカジュアルファッションはドレスファッションにも影響を与えたのではないでしょうか。
すなわち、オンタイムのドレスファッションにも機能化・カジュアル化の流れが出てきました。
そういう影響力もエルメスや「クイック」にはあったのではないかなと思います。
もちろん、エルメス以外のブランドやデザイナーの影響も大きいと思いますが。
ここで気になったのが「イタリア」で、余談で書いてみます。
余談 1
ここまで書いてきて思い出した事があります。
以前、パラブーツの歴史を調べていた時に知った、「イタリア」と「パラブーツのミカエル」と「エルメス」です。
1980年代に経営難に陥っていたパラブーツを救ったのが「ミカエル」の流行でしたね。
当時イタリアのスタイリスト達に好まれていたのが「ミカエル」だったそうで、そこから人気に火がついたそうです。
そして、エルメスが「ミカエル」の別注をオーダーしていますね。
この点、ググっていると、エルメスによる注文がきっかけで「ミカエル」が誕生したというような記述も見られるのですが、はたして1945年にエルメスが注文したのだろうか・・・???
ともあれ、少なくとも80年代頃にエルメスからパラブーツ製のチロリアンシューズが発表されている情報は見られるので、そこで追い風が吹いたのではないでしょうか。
このパターンって、2000年頃のサントーニの「メンフィス」も似ているな、と思いました。
やはりイタリアから始まり、エルメスに認められ、世界的な評価が上がりましたよね。
余談2
更に、当時の「イタリア」が重要なのかなと思いました。
80年代のイタリアというと、1980年に公開された映画『アメリカンジゴロ』によってジョルジオ・アルマーニの名声が高まりましたね。
そして、ジョルジオ・アルマーニ、ジャンニ・ベルサーチェ、ジャンフランコ・フェレ、の活躍によりイタリアファッションが注目されるようになった頃でしょうか。
そんなイタリアで「ミカエル」が見出され、そこにエルメスが目を付けた!?
90年代のイタリアはというと、ドルチェ&ガッバーナ、トム・フォードのグッチ、プラダ、の人気が高まり始めた頃でしょうか。
特に前2ブランドでは、テーラードジャケットにデニムというスタイルが発表され、世界的に広がりました。
すなわち、ドレスとカジュアルのミックススタイルですね。
加えて、イタリアに対するファッション的な注目度も絶頂期を迎える頃ですね。
当時のファッション界を知る証言者の方々の記事もいろいろありました。(感謝)
クラシコイタリア協会が誕生したのは1986年との事です。
ピッティ・ウォモから世界へ発信していったのですね。
1994年にベルルスコーニ首相が各国首脳へタイをプレゼントした頃からブームへの流れが起き始めたようです。
2000年代に入るとピッティ・ウォモへの訪問者が右肩上がりへ増えていき、
2006年頃からはカジュアル化の流れが起きていたようです。
「レザースニーカー」はこの流れに乗ったのではないでしょうか。
2008年にリーマンショックが起き、メンズファッションのカジュアル化の進行とともに、低価格ブランドが台頭してきました。
その頃にはインフルエンサー達の間でカジュアルスタイルは峠を越え、クラシック回帰やヴィンテージミックスへと流れていきました。
そして現在へ繋がるのでしょうね。
ビームス クリエイティブディレクター 中村達也氏のお話も大変興味深いです。(感謝)
1999年当時の情報なのですね!!
「イタリア人の英国好き」というのも面白いですし、ベースに英国トラッドがあるから「クラシコ」たりうるのかもしれませんね。
そして「ワードローブの公式」って・・・アメリカントラッドの時もそういうのが有ったと読んだ事があります。
そう考えると、クラシコ・イタリアというのはイタリアントラッド!?!?
このように、きちんとしたドレススタイルが独自のカテゴリーとしてあったようですが、
2008年前後からカジュアル化の流れが起きたそうです。
「カジュアルミックス」という言葉もありますね。
当時のイタリアンクラシックがいかに人気であったのかを象徴するとも言えそうなのが『映画007 ゴールデンアイ(1995年)』ではないでしょうか!?
というのは、ジェームズ・ボンドがイタリアのテーラーBrioni製のスーツを着用するようになったからです!
ここから『カジノ・ロワイヤル(2006年)』までBrioniが採用されました。
この頃がイタリアファッションの最盛期と言えるのではないでしょうか。
整理すると、
イタリアのファッション人気の中に「モード」と「クラシコ」がありました。
一見すると「モード」はトレンドを生み出すデザイン優先のファッション、「クラシコ」は古き良き伝統的なファッション、という相反する関係のように思えます。
しかし、「クラシコ」は以前からフランスやイギリスの有名ブランドのOEMを引き受けていて、「モード」なデザインにも触れていましたね。
そして「クラシコイタリア協会」を設立するまでに発展していきました。
その後、ドルチェ&ガッバーナのように伝統的なイタリアのテーラリングをベースに「モード」を生み出すブランドが人気となっていきました。
やはりその「モード」を製造していたのは「クラシコ」のファクトリーだったのではないでしょうか。
そうしたイタリアの「モード」に注目が集まった事で「クラシコ」の評価も高まったのではないかと思います。
つまり、両者は相反するというよりも、相乗効果を産みながらイタリアファッションを発展させたのではないかなと思います。
そして、ドルチェ&ガッバーナやグッチがお手本となり、ドレスアイテムとカジュアルアイテムを組み合わせてコーデするカジュアルミックスが広がって行きました。
その中にはスニーカーを取り入れたファッションもありました。
そうして、ファッションのカジュアル化へと流れていったのではないでしょうか。
エルメスもそうした流れを先取りしていたと思います。
そして、綺麗目なカジュアルスタイルであったところがイタリアのモードとの違いだったのかなと思います。
その代表作の1つが「クイック」だったのかなと思います。
今回はここまでです。
ではでは。